薬剤性腎障害

薬剤による四大臓器障害として、骨髄障害・肝障害・腎障害・皮膚障害がよく知られています。中でも薬剤性腎障害は重要な一症候です。
腎障害は、腎臓への血流の減少や糸球体・尿細管への直接的な毒性により起こります。とくに高齢者、脱水、糖尿病、動脈硬化、腎機能が低下した患者さんにおける薬剤使用は常に注意すべきです。
よく使用され、注意が必要な代表的な薬剤性腎障害を原因薬剤に分けて概説します。

抗生物質・抗菌薬

1. アミノグリコシド系抗生物質
急性腎不全の原因となる急性尿細管壊死を起こします。薬の量に依存するので、腎機能に合わせた投与量に調整してもらうことが大切です。最近は、抗生物質も多様化しているので、腎機能障害のある場合には使わなくなっています。
2. βラクタム系(ペニシリン系)抗生物質
アレルギー性の急性尿細管間質性腎炎を起こします。薬の量ではなく、アレルギーで起こります。発熱、発疹、関節痛などの全身症状を伴います。

非ステロイド系抗炎症薬(NSAIDs)

急性尿細管壊死、アレルギー性の急性尿細管間質性腎炎ともに起こします。また、特殊ですが、「NSAIDs腎症」といって急性腎不全とネフローゼ症候群(微小変化)を起こすことがあります。また、この薬はプロスタグランジンという物質の産生を抑えるために腎臓への血液の流れが悪くなり、急性腎不全を起こすことがあります。頻度が高く、薬を飲んだ後に、尿量が減るようでしたら、要注意です。

抗癌薬

シスプラチンによる急性尿細管壊死はよく認められます。腎機能ごとに用量を調節し、腎障害予防に十分な点滴を行いますが、それでも腎障害が起こってくることがありますので、注意が必要です。

造影剤

造影CT、血管造影など造影剤を使用した各種画像検査は、診断や治療に有用ですが、腎臓への血流障害、尿細管障害により、腎機能に悪影響を及ぼすことがあります。脱水、利尿薬使用、高齢者、糖尿病、動脈硬化症、腎機能低下などの場合には、特に注意が必要です。
腎機能にもよりますが、尿がしっかり出るように、検査前後ともに十分に水分を摂取しておくことが大切です。点滴(補液)を行うこともあります。
また、検査や治療の間隔、造影剤の量も影響するので、腎臓内科の主治医と検査や治療を行う担当医とも相談してもらうことも大切です。

その他

シクロスポリン(免疫抑制薬)による腎機能障害、抗リウマチ薬によるネフローゼ症候群(膜性腎症が多い)、抗甲状腺薬によるMPO-ANCA関連血管炎(半月体形成性糸球体腎炎)、チャイニーズハーブ(漢方薬)による間質性腎障害などがあります。